2013年10月17日

ネギは九条(くじょう) 憲法は九条(きゅうじょう)

第3回
変えにくいからこそ憲法

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今年度のアカデミー賞の12部門にノミネートされ、主演男優賞と美術賞を獲得した映画「リンカーン」をご覧になりましたか。リンカーンといえば奴隷解放で有名な米国大統領ですが、この映画は奴隷解放を制度として徹底するためにアメリカ合衆国憲法を改正することを決断したリンカーンの苦悩と粘り強い交渉が主題でした。アメリカの場合、憲法を改正するには、まず上院、下院それぞれで3分の2以上の賛成、そして4分の3以上の州議会の承認が条件となっていますから、リンカーンの苦労も並々ならぬものだったということがよくわかります。

 

日本の場合はどうでしょう。

 

第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

 

衆議院、参議院それぞれで3分の2以上の賛成、その上で国民投票による過半数の賛成と、改憲には2段階の関門があります。アメリカの例に見るように日本の改憲の条件が特別厳しいわけではなく、ほかの国でも憲法は簡単に変えられないようになっています。これは憲法が他の法律とはちがう特別の位置づけにあるからです。前回の「国民は憲法を守る義務がないって、ホント?!」の中でも述べましたが、国民を守る立場に立って権力を持っている人々の手を縛っているというのが憲法です。ですから手を縛られている国会議員が憲法を変えようとする場合、過半数で勝手に憲法の縛りを緩めることができないように、少なくとも3分の2以上が必要としているわけです。

 

憲法改正に関し、もう一つ大切なことは、改正には一定の限度があることです。たとえ国会で3分の2の賛成、国民投票で過半数の賛成を得たとしても、どんな憲法にでも変えられるというわけではないのです。

 

そのことが、憲法の前文に次のように書いてあります。

 

これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われわれは、これらに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 

ここでいう「人類普遍の原理」とは次の3点です。

① 国民主権(国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する-前文)

② 恒久平和(政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする-前文)

③ 基本的人権(この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる-第11条)

 

そして、この原理の根っこには「立憲主義=憲法は権力の手を縛るもの」という基本原則があります。もし、逆に「憲法が国民を縛るもの」になったとしたら、それはもう「憲法が憲法でなくなってしまう」ことです。

言葉が少し難しいのですが、立憲主義という基本原則と3つの原理、これこそが日本国憲法の要です。

 

 


若原 弘道

若原 弘道(わかはら・ひろみち)

1941年、札幌市で生まれました。定年退職後、東京から宮前区有馬に移ってきました。
2005年の「宮前九条の会」発足以来、事務局長を務めています。
趣味:学生時代から男声合唱をやっています。現在も大学のOB合唱団で歌っています。定年後、プロの声楽家についてボイストレーニングを受けていますが、声を出すことの難しさを痛感しています。現在「アリーノうたごえ広場」の司会・進行をやっています。そのほか、下手な俳句を作って「NHK俳句」に投稿したりしています。息子が小学生の時に「日本野鳥の会」に入会したのを機会に夫婦で家族会員になっていますが、最近はあまりバードウォッチングに行けないのが残念です。

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